萌の移り変わり
ツンデレ編
その昔、私がまだ中学生の頃。
オタクはまさに陰にいた。見ているアニメも読んでる小説も理解されず、見つかれば「キモい」と言われる存在であった。
現実が心底嫌だとは思っていなかったが、ラノベやアニメの世界とは違った。
こんな平凡な自分を認めて、あまつさえどこか非現実的な世界へと連れてってくれるヒロインはいないものか。
彼女らは、強引である。自分の言うことなど聞こうともしない。
しかし、なんだかんだ自分を認めてくれているようにも思える。そして、僅かながら好意すら伺える。
しかし、ストレートには言ってくれない。憎まれ口の方が多い程だ。
私はそんなヒロインが大好きであった。
妹編
私は高校生となった。高校生は大人である。
昔の中二の自分より現実をしっかりと見れている自負があった。
そう俺は年下に頼られるほどの余裕のある大人、というには経済的に自立はしていないので…つまりはお兄ちゃんである。
彼女らヒロインは時に優しく、時に素直じゃない、だが弱い部分もあるお兄ちゃん大好き妹なのである。
そんな妹に振り回されつつも、大人な俺(お兄ちゃん)がちゃんと彼女らの問題を解決していくのである。
私は頼れるお兄ちゃんなのだ。そんなお兄ちゃんに妹はメロメロなのである。
姉編
私は大学生になった。そこそこの経済力とそこそこの社会性を持ち、尚且つ自由を手に入れた。
しかし私は気がついたのだ。
「俺は全然しっかりしてないぞ」
中学高校と親の元、校則の下で縛られていた故に自分は勘違いをしていた。
自分はしっかりした人間なのだと。
しかし違った。私はだらしない。誰かに叱って貰わないと、優しく面倒を見てくれないとまだ私はやっていけないのだ。
「お姉さんに任せない」
そう彼女らは言った。
時に厳しく、しかし優しく包み込んでくれる彼女らは、自由を謳歌しつつも多くのスケジュールに追われる俺を癒してくれた。
そして俺は彼女らの大人っぽさに気づかされる。
俺はまだまだ子供だなぁ、と。
こんな包み込むような大人の包容力とエロさは俺にはない。憧れにも似た感情を抱いていたのかもしれない。
母親編
社会人になった俺は、名実ともに大人の仲間入りをした。
初めのやる気と希望とは裏腹に、厳しい現実社会は俺の心をすり減らしていった。
俺は昔の彼女らに助けを求めた。
…違う。強引さと罵倒なんていらない。
…違う。年下の面倒なんて今は見てられない。
年上の女性、優しいお姉さん!
…
が、なんか満たされない。何故だ?
何故お姉さんでは満たされないのだ!?
そんなときあるメロディーが俺の頭の中に流れる。
「もう一度子供に戻ってみたい」
あぁ、そうか。
昔はあんなに早く大人になりたいと思っていたのに。
なってみてわかった。
俺はまだ子供でいたいんだ。
誰かに慰めてもらいたいんだ。
失敗をする自分をそれでも肯定して欲しいんだ。
無条件に愛して欲しいんだ。
社会人の俺が求めていたのは
「母性」だったのだ。
偶然
ぶっちゃけ、昨今の母性ブームはそんなに好きではないのだけれども、ここ十年位の萌の移り変わりを見ていくと、なんだかんだ自分のライフステージや特性に合わせて変動していっているような気がしたので、それっぽく書いてみた。
オタクの層が大体自分と同じ年齢層で、その層のライフステージによって求めてるものがちゃんと反映されていた、というのか求めていたものが順当に売れたというのか。
なんの調査も根拠もない妄想話である。
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